社会人になって2年目。先輩がテニスのラケットを買いに行くというのでついていった。今思えばスポーツショップハマだった。先輩はウイルソンの“クリスエバートオートグラフ”というちょっと高いラケットを買った。木目がきれいなすてきなウッドだった。でも僕の目はでっかいアルミのラケットに釘付け。その年に初めて出た“デカラケ”だった。興味があるとすぐに飛びついちゃう僕は極安給料のくせに衝動買いしてしまった。 | |||||||||
高校卒業のころテニス部の友達にテニスしようよと誘われた。そのとき大好きだった娘も来ることがわかり、いい所を見せたくてそいつに特訓を受けた。でも手が痛いばっかりで“こんなのつまんないなぁ”と生涯このスポーツにはかかわらないでおこうと決めた。 | |||||||||
そんな苦い経験があったのでおそるおそる打ってみたらなんと不思議!ボールがポンポン飛んでいく。スゥイートスポットに当たったときの気持ちよさに一瞬でとりこになってしまった。 | |||||||||
一美に村のテニスクラブに連れて行ってもらい、やっているうちに村一番だと自負するようになった。村二番の友達と今はなきEPSONCUPに出場した。結果は0-8で負け。運が悪かったと思ったが次の年も負けた。俺たちは強いはずなのにおかしいなぁと思ってためしにJOYテニス松本に行った。なんとテニスは運動公園の駐車場にいるような人ばかりだと思っていたら、うまい人がいっぱいでびっくり。 | |||||||||
それからたくさんのお金と時間をかけてそれなりに上手になっていつしか県の主催の大会にも出るようになった。でも僕のことなんて誰も知らないしもちろんしゃべることもなくて1日中1人でコートにいた。まるで透明人間のようだった。 | |||||||||
何回も何回も負けた。そんなある日選手権の中信予選ですごく調子が良くて村上さんに勝って本戦入りしてしまった。コートから引き上げる途中で憧れの深志さんに“がんばったじゃん”と言われた。うれしかったなぁ。それからは僕にみんな話しかけてくれるようになった。“おはよう”“今日は調子どう” | |||||||||
僕の居場所ができた。僕はここにきていいんだ。そう思えた。へたくそだった時の気持ち。だれもコートで相手にしてくれないさみしさ。午後まで残れる強い選手のかっこよさ。 | |||||||||
今はそんな選手に声をかけるのが大好き。あのころの自分がここにいる。そんな感じ。そしてたくさんの人がテニスを好きになって、たくさんの仲間ができたらなんて素敵だろう。
やっぱりテニスが好き。 |
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